日本は国土が狭く、山が多い地形なので、風が弱く風況が一定しないために、風車にも過度のストレスが掛かりやすいなど、風力発電にはヨーロッパなどに比して不利であるとされる。
一方、
洋上風力発電は、海上は比較的風が強く、風向も安定していて、騒音や低周波被害もなく、設置のための輸送も容易で、5MW、7MWの大型化が可能であるが、設置や陸上への電力の輸送のコストが高い、メンテナンスのためのアクセス性の悪さ等が言われている。
さらに、日本近海は急激に深くなるため、遠浅の海のヨーロッパと違って、着床式の洋上風力発電は不利で、浮体式洋上風力発電が考えられていた。(着床式と、浮体式の分岐点は、水深50m前後とされる)
ここ10年程、ヨーロッパ、中国などの、洋上風力発電の目覚ましい発展を横目に、
日本の洋上風力発電は、ほとんど停滞したままの感がある。
しかし、東北沖大地震以降、ようやく、洋上風力発電(着床、浮体式共に)に対する実証実験など、具体的な建設に対する動きが出て来たのは、歓迎される。
この動きが、本格的な洋上風力発電の建設に繋がって行く事を祈ります。
● せたな洋上風力発電所(風海鳥) ● 酒田海上風力発電所
設置場所 | 北海道せたな町瀬棚区 | 山形県酒田市宮海 |
---|---|---|
稼働年月 | 2003年10月31日:試運転開始2004年04月01日:本格稼働 | 2003年11月16日:試運転開始2004年01月31日:本格稼働 |
メーカー | Vestas(デンマーク) | Vestas(デンマーク) |
定格出力(kW) | 600 kw | 2,000 kw |
基数 | 2 基 | 8 基 |
総出力(kW) | 1,200 kw | 16,000 kw |
ハブの高さ | 40.3 m | 60.0 m |
ローター直径 | 47.0 m | 80.0 m |
カットイン風速 | 4.0 m/s | 4.0 m/s |
カットアウト風速 | 25.0 m/s | 25.0 m/s |
試運転開始日と、本格稼働日の前後から、どちらも日本初の洋上風力発電所と主張しているのが面白い。
● ウィンド・パワーかみす第1, 第2洋上風力発電所
設置場所 | 茨城県鹿島港 海浜地区工業団地の護岸から40~50mの海の中 |
---|---|
稼働年月 | 2010年 2月(第1) 2013年 3月(第2) |
メーカー | 富士重工業(日本) |
定格出力(kW) | 2,000 kw |
基数 | 7 基(第1) 8 基(第2) |
ハブの高さ | 60 m |
ローター直径 | 80 m |
カットイン風速 | 4.0 m/s |
カットアウト風速 | 25.0 m/s |
耐風速 | 70.0 m/s |
ウィンドパワーいばらきによって建設、運営されている着底式洋上風力発電所。
使用されている風車は、富士重工業と日立製作所が共同開発した、世界初の大型ダウンウィンド方式
で、ナセルの風下にブレードがある。この方式は突風に強く、風向きが一定しない日本特有の風況に適しているとされる。
基礎部分は、熊谷組の施行による。
また、この発電所は、外洋に面して堤防が築かれていないため、直接鹿島灘の荒波にさらされる、日本初の本格的洋上風力発電所とされている。
ウィンドパワーいばらきでは、第1発電所に続く北側の海岸線沖合いに、2013年3月から、かみす第2洋上風力発電所が本格稼働しているほか、近い将来、もっと沖合に100基規模の洋上風力発電所の建設を計画していて、出来るだけ早い実現が待たれる。
● 風レンズ風力発電&風レンズ風車搭載浮体式海上風力発電実証実験
九州大学・応用力学研究所の大屋教授の研究による「つば付きディフーザー風車」通称「風レンズ風車」は、風車翼を囲むように取り付けられた「風レンズ」(集風体)により風車翼に風を集め、通常の発電風車の2〜5倍の発電効果が望めると同時に、騒音も大幅に軽減され、現在、実用段階に入っている。
欧州などに比べて風が弱く、風向も変わりやすい日本には、騒音軽減の効果からも
、普及が期待される。
博多湾 浮体式海上風力発電実証試験は、九州大学が環境省から委託された事業(地球温暖化対策技術開発等事業)の一環として、福岡市と連携し、九州大学・総合理工学研究院 経塚教授の海上浮体(直径18m、六角形のドーナッツ状)に風レンズ風車(3kw×2基)、太陽光発電パネルを載せて、博多湾・海の中道沖、約650mに設置し、2011年12月から13ヶ月間行われた。
第2ステージとして、玄界灘・津屋崎沖に100m級の浮体を連結して浮かべ、200kw級の風レンズ風車を複数、太陽光パネルを搭載の他、潮流、波動発電
も同時に行うマルチ発電プラットホームを計画している。
また、浮体はドーナッツ状であるため、中を魚の養殖場として利用する事を構想し、漁業関係者からは好評を得ている。
大屋教授の将来的な構想は、蜂の巣状に連結した300m級の浮体
に、MWクラスの風レンズ風車を複数搭載し、太陽光発電など、種々の発電装置を搭載して、1基で原発級の発電ファームを建設する事にある。
ちなみに、この実験予算は、6,000万円程であるが、今までに1兆円近い国費が使われ、再三の事故で運転が停止している高速増殖炉・もんじゅは 、
停止した状態で安全を保つために、1日5,000万円を超える費用が必要とのことである。現在、もんじゅは安全管理のずさんさから、使用停止の命令を受けた。
● 銚子沖洋上風力発電実証実験
設置場所 | 千葉県銚子市の南沖合3km |
---|---|
稼働年月 | 2013年 01月 |
メーカー | 三菱重工業(日本) |
定格出力(kW) | 2,400 kw |
基数 | 1 基 |
ハブの高さ | 80 m |
ローター直径 | 92 m |
基礎直径 | 21.0 m |
水深 | 11.9 m |
この実証実験は新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)と、東京電力の協力で(銚子沖:3km、水深:11.9m)行われている着底型洋上風力発電で、沖合いでの2,000kwクラスの大型風車の発電は日本初である。
NEDO
では、ここの他に、日本海側の北九州市沖でも同様の実験を2013年6月から始める予定である。